ゆりどく

百合的な何かを書いていこうかなと

友達以上だけど恋人ではない『今日はまだフツーになれない』に登場する名前のない関係性のふたり

最近「名前のない関係性」というものがじわじわ流行っている気がします。
仲の良さは友達以上だが、恋人かと言われれば違う。こういう微妙な関係性にエモさと尊みを感じる。そういった百合漫画が各所で広まっている。

U-temo先生『今日はまだフツーになれない』もそうだ。



 

以下ネタバレ注意。

 

この作品は高校時代から27歳までのふたりを描いた百合漫画。
世間様から少しズレた主人公たちが生きにくさを感じてる。だからふたりで支えあって生きていこうよという話。

 

ではない。

 

お互い大変なのは分かるが安い共感はしない。気遣うわけでも突き放すわけでもないこの微妙な距離感が心地よい。そしてそんな距離感からの山下の高橋への優しさ、思いやりが大変尊いのだ。

 

例えば友達と遊びに行く回。このときは山下は水族館に行きたくて高橋はユミバーサルスタジオジャパンに行きたいという状況だった。どっちが良いかふたりで話し合いをして決めることに。

 

山下はプレゼンをして水族館の魅力を伝えたが、高橋はユミバユミバと連呼するだけだった。本来ならプレゼンの上手なほうが選ばれる。しかし遊ぶ場所はユミバになったのだった。

この話し合いの様子などはほぼ描かれていないのだが、山下が遊びに行きたい場所を譲ったことが想像できる。自分の行きたい水族館より高橋の行きたいユミバを優先しているの良き。

 

あと個人的にとても好きなシーンがある。

なんやかんやあってふたりは一緒に暮らすことになった。ある時高橋が好きなゲームキャラの等身大パネルを買いたいと言う。それに対して山下はさらっと「3人暮らしになるわけか」と返事している。

 

これ、めっちゃ良くね??

ユーモアと思いやりが込められていて、こういうことなかなか言えない。

パネルを人に例えるユーモアと、高橋の大切にしているものへの尊重。

僕もこういうことが言える人間になりたいと思うのでした。

 

では逆に高橋から山下への思いは何か。

 

「もし山下があたし以外と住みたいって言いだしたら」

「軟禁してしまうかもしれん」

 

愛が重い!

この一言から高橋が山下のことを「そばにいてほしい存在」と思ってるのが伺える。一緒にいてオモロイと思える人は山下以外にもいる。けれども自分の好きなものを大切にしてくれるのは山下なのである。

 

 

高校から27歳の約10年間、ほかの友達とは疎遠になったりしているけど山下と高橋はずっと一緒にいる。お互いが過干渉にならないよう、けど離れ離れにならないようにしている。高橋がちょっと遠いところに引っ越しして、山下が追いかけてくるのも良き。

ヘンに支えあったり励ましあったりしない。適切な距離でただそこにいることが彼女たちにとってのフツーなのだ。

 

 

 

 

 

 

名前のない関係性、二人暮らしといえばこの作品もおすすめ。

 

 

距離感について思ったことも書いてます。

rindokudoku.hatenablog.com