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『生のみ生のままで〈下〉』病めるときも健やかなるときも愛し続けた社会人百合小説

綿矢りさ『生のみ生のままで〈下〉』の感想です。

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前巻はよかった。
紆余曲折へて付き合うことになったふたり。
みんなには秘密で隠れていちゃいちゃするのって良いものです。


それにしても続きが気になる終わり方でしたね。
何やら不穏な空気だし、バッドエンドだったらはいやだなあ。


以下ネタバレ注意。

 あらすじ

付き合っていることがばれたので、周囲の人たちによって別れさせられます。
彩夏は事務所の反対を押しきって付き合い続けようとします。
しかし逢衣は彩夏の女優として輝いている姿が見たいので、会わないと言いだしました。
まさか逢衣が別れることに賛成するとは思わなかった彩夏は、沈んだ気持ちのまま芸能活動を続けます。

5年くらいたって彩夏は病気で芸能界から姿を消しました。
逢衣はどうにか彼女の所在を突き止めて看病するのですが、彩夏は裏切った逢衣に対して冷たく接します。

良かった百合ポイント

めんどくせー彼女ですよ。
本当は好きなくせになんで冷たい態度をとるのでしょうか。
あしらわれてるのに逢衣はかいがいしく看病します。

好かれている自信というか証拠もありましたし、逢衣は臆さず接していきます。
そして看病のかいもあって彩夏の症状は良くなっていきました。

彼女の病気は精神的なもので、逢衣の支えがないとだめみたいです。
というわけで、別れたのは不正解だったように思えます。
芸能活動を続けていくにはふたり一緒がよかった。
目先の利益を優先して別れさせた事務所の判断は良くないです。


しかし不倫してるわけでもないし、言うほどスキャンダルなのかな
100歩ゆずって彼女がアイドルなら恋愛禁止はわかる。
アイドルは夢を売るのが仕事なので、特定の人をひいきするわけにはいかない。

でもいい年した女優だから誰と付き合おうが問題ないように思うのです。
もしかして今だに同姓愛は許されない風潮なのでしょうか。
ナンセンスですね。

一応元カレとか理解してる人はいるのですが、両親にはとても反対されてしまいます。
身内に否定されてショックを受ける逢衣。
絶縁とかはなくて、驚いたから受け入れる時間をほしいと両親。
このあたりもいつかは解決できるといいですね。

生のみ生のままで

ってタイトルがおしゃれです。
元の言葉は着の身着のままですね。
今着ている服のほか、何も持っていないという状態を指します。
「着」と「生」を素直に入れ替えると、今を生きていて何も持っていないって意味でしょうか?
常識や世間体は持たないで、自分らしく正直に生きる。
逢衣も最初は同性だからと彩夏と付き合うことに嫌悪していました。
しかしそういった常識を脱ぎ捨てることで、本当に好きな人と一緒に生きていけるようになります。

 

私たちの戦いはこれからだ!

みたいな終わり方でした。
これからも世間の目やいろいろと問題が出てくると思いますが、ふたりなら乗り越えて行けそうな気がします。
とにかくバッドエンドじゃなくてよかったです。
リア充め末長く爆発してろ、と思いました。